高血圧の基準変更

2024年4月から、特定検診における高血圧での「受診勧奨」と判定する基準が、現在の「収縮期 140/拡張期90mmHg」以上から「収縮期160/拡張期100mmHg」以上へと変更されることになりました。これは「受診勧奨される人が10分の1」になる計算となりますが、この変更にはいくつか理由があるようです。

一つ目は、国際的な時代の流れです。少し前に医療の世界で論文や薬の治療の不正が横行し、治療指針やガイドラインも製薬会社によって歪められた時期があり問題視されてきました。2004年には医師と製薬会社の経済的な癒着=利益相反を解消しようという動きが起こり、コレステロールや血圧の治療ガイドラインが科学的に作られるようになりました。2019年の英国政府のガイドライン(NICE)で、高血圧に対する医療介入は、収縮期160/拡張期100mmHg以上となったのですが、日本はこの世界の流れから取り残されていました。

二つ目は、日本人を対象とする研究です。同じ 2004年に、大陽一医師らが総合検診医学会で 70万人の健診結果から統計的な方法で「男女別年齢別基準範囲」を作りました。加齢に伴って血圧が上昇するのは正常な変化で、自立度を高めるなどの効果があるのです。55歳以上では男女とも収縮期 160/拡張期 100mmHg までは正常でした。これを裏付けた住民追跡研究の結果を 2008年に発表しました。60歳以上の男女とも、死亡率の上昇が見られたのは収縮期 160/拡張期 100mmHg以上でした。

高血圧の診断基準そのものが変更されたわけではありません。合併症がある場合は注意が必要です。以下の表は血圧と脳心血管病リスク層別化一覧です。

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